食事制限よりも運動で!高齢者のダイエットとエクササイズ
平成28年の『国民健康・栄養調査』によると、わが国で最も肥満の多い年代は、男性では50代、女性では60代だそうです。また、その数はここ30年で倍増しているとも言われています。
高齢期(60歳以上)の肥満は高血圧や糖尿病、心疾患などのリスクが伴うだけでなく、腰痛や変形性膝関節症などの原因にもなり得るため、少なくともBMI(※1)を25以下には保ちたいところですが、ダイエットの仕方には少し工夫が必要です。
※1. BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
高齢者のダイエットは食事制限に注意
高齢期の肥満にはサルコペニア(加齢による骨格筋量の減少)の合併率が高いという大きな特徴があり、それによって身体機能も低下しやすい傾向にあります。
過度な食事制限を伴うダイエットは、筋肉の維持に必要な栄養も不足しやすく、結果としてサルコペニアを促進させかねません。高齢者のダイエットは、たんぱく質を中心にきちんと食事をとりながら運動(特に筋トレ)を併用して少しずつ減量していく(※2)ことが重要です。
※2.一昨年発表された日本老年医学会『高齢者肥満症診療ガイドライン2018』では、高齢者肥満の食事療法に関して以下のように記載されています。
1.減量による利益とリスクを勘案して、減量を行う
2.体重減少のためには、食事摂取エネルギーの減量が必要である
3.エネルギー量は1日25kcal×標準体重(kg)以下を目安とし、現在の体重から3〜6カ月で3%の減少を目指す
4.指示エネルギーの50%から60%を糖質、15〜20%をたんぱく質、20〜25%を脂質とする
5.高齢者における糖質摂取制限の安全性は確認されていないことから、極端な糖質制限はのぞましくない
6.サルコペニアやフレイルの予防のためには、たんぱく質の摂取は少なくとも1.0g/kg標準体重/日をとることが望ましい
7.サルコペニア肥満では十分なたんぱく質の摂取が必要とされるが、重度の腎障害では注意する
8.ビタミン、ミネラルの十分な摂取が必要である
9.フォーミュラ食を1日1回利用することで減量できる場合もある
10.80歳以上の高齢者の減量に関してはエビデンスがない
引用元 URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/55/4/55_55.464/_pdf/-char/ja
高齢者のダイエットにおすすめのエクササイズ
サルコペニア肥満の高齢者には、脚やお尻など下半身の筋力低下が多く見られます。
これらの筋肉を鍛えることは「立つ・歩く・登る」といった日常動作を快適にするだけでなく、基礎代謝を高めて脂肪を燃やしやすい体を作ることにも繋がるため、筋トレも下半身を使ったエクササイズを行うのが好ましいと言えるでしょう。
以下におすすめのエクササイズをご紹介します。
スクワット
■ 鍛えられる部位
太もも(全体)・お尻
■ フォーム・動作
① 足を肩幅より少し広めに開きます。爪先は少し外側に向けておきましょう。
② 膝が爪先より前に出ないように気をつけながら腰を落としていきます。
③ 背中が丸まらないよう胸を張ったまま、息を吐きながら立ち上がります。
脚力に不安のある方は、椅子を用意してそれに腰かける要領で行うのがおすすめです。
レッグ・エクステンション(膝伸ばし運動)
■ 鍛えられる部位
太もも(前側)
■ フォーム・動作
① 背筋を伸ばして椅子に座ります。
② ゆっくり膝を伸ばして片足で蹴り上げます。
③ これを左右の足でそれぞれ行います。
日頃、全く運動を行なっていない方はウォーキングから
筋トレとは違いますが、日頃の運動習慣が全くなく下半身の筋力が極端に弱い場合は、ウォーキングでもある程度鍛えられます。
また、すでに膝や腰などの関節に痛みがある高齢者にはプールなど水中での運動も推奨されますが、下半身の筋力を鍛えるという意味では、やはり水の浮力が影響しない重力下、つまり地上での運動に軍配が上がります。
現在の体力や健康状態と相談して、これらの運動強度を選びましょう。